中原中也「今日も小雪のふりかかる」

今日も小雪が舞っています。

「汚れつちまつた悲しみに……」
中原中也『山羊の歌』より

汚れつちまつた悲しみに
今日も小雪の降りかかる
汚れつちまつた悲しみに
今日も風さへ吹きすぎる

汚れつちまつた悲しみは
たとへば狐の革裘(かはごろも)
汚れつちまつた悲しみは
小雪のかかつてちぢこまる

汚れつちまつた悲しみは
なにのぞむなくねがふなく
汚れつちまつた悲しみは
倦怠(けだい)のうちに死を夢む

汚れつちまつた悲しみに
いたいたしくも怖気(おぢけ)づき
汚れつちまつた悲しみに
なすところもなく日は暮れる……


 「汚れちまつた悲しみ」に明け暮れすれば、悲しみに絡めとられ、身体感覚も怪しくなり。寄るべなき者として生を享けたことに、中也の天才があったのだろう。
 三十歳という若さで、この世を去った中也は、夭折だったのか、生を全うしたのか。神の計らいに間違いはなかったものと信じている。

以下、
中原中也「ああ、ボーヨー、ボーヨー」
下記、
小林秀雄「中原中也の思い出」
です。