現在 育休教諭の Nさん ご推薦の、 ◆ 瀬尾まいこ『そして、バトンは渡された』文春文庫 を、一昨夜 読み終えた。現代小説を読むのは、 ◆ 小川糸『ツバキ文具店』幻冬舎文庫 以来のことだった。二年ちかくの歳月が経っている。 まる 二日間にわたっての読書だった。「そして、 バトンは渡された」のを見届けた。 「そして、今、バトンは渡された。この本を読んだあなたに。ここからどんな道をどんなふうに走って、次は誰にバトンを渡すことになるのだろう。今までもこれからも、このリレーはずっと続いていく」(上白石萌音「解説」425頁) いまバトンは私の手元にあるらしい。 「 さらさら、さらさら流れていくこの文体の正体を見極めようと読み進めたが、その余裕もなく、さらさら、さらさら流されるままに読み終えた」 「豊富な 話題からなり、あまりにも唐突な出来事に、本を伏せたこともあった」 「読者の興味を魅く、この軽やかな筆の運びと、その意外性が人気の秘訣であることは確かである」 上記は、 ◆ 小川糸『ツバキ文具店』幻冬舎文庫 を読んでの私の感想であるが、これはまた、本書についての感想でもある。 深刻な話題はうまく回避されている。これは現代文学(?)の禁忌事項かのようでさえある。しかしその結果、薄っぺらな内容になることからは免れず、娯楽作品の域を出ない。 カバーには、「2021 年間ベストセラー 文庫部門第1位 2019年本屋大賞受賞作 累計120万部突破! 令和最大のベストセラー映画化 大ヒット上映中 92.8% が泣いた」と賑やかな文字が踊って いるが、本書は映像作品にちかく、あえて映画館に足を運ぶ 必要はあるまい。 「 92.8%」という数字に関しては、皆でそろって涙することで、一刹那のこととは知りつつも、感傷 をともにしたいという切なさを覚える、といえばあまりにも辛辣か。 14の付箋を入れた。そのうちの7つが、「早瀬君」のピアノの演奏に関する記述である。いずれも散文詩である。 また、この小説の主人公は、「優子さん」ではなく、「梨花さん」のような気がしてならない。「梨花さん」は、バトンさばきの名手である。 読み終えてみれば、幾つのも伏線があった。娯楽作品を娯楽作品として読めば楽しく、すっかり本屋大賞受賞作に脱帽した格好である。 作中にある、中島みゆきの「時代」,「糸」,「