山本空外「速やかに生死を離れんと欲わば」

ほんのつい今し方、
◆ 龍飛水編『いのちの讃歌 山本空外講義録』無二会
を読み終えた。628頁からなる大部の講義録である。最終章は、「湿原の散策」の合間の読書だった。
 仏教に対する理解が進んだ。誤解が正され、認識を新たにした。
「極楽に往生したのを、『往った』というのだから、過去のことかというと違う。(中略)こうして話をしている『今』のことです。お経は『今』のことしか考えない。仏教に限らず宗教はみなそうです」(573頁)
 極楽といい浄土といい、地獄というも、「永遠の今」のことである。死後のことではない。
 法然上人の主著『選択(せんちゃく)本願念仏集』「一巻が十六章もあって長いから、略してほんの二、三行にまとめて(『略選択』)、『速(すみ)やかに生死(しょうじ)を離れんと欲(おも)わば』と書いておられる。」(602頁)「速やかに」とは「今すぐに」のことであり、「仏教とは、宗教とは、生死を離れるということです。サトルことです。(中略)
 すみやかに生死を離れること、『速欲離生死」この五文字で仏教はまとまり、サトレルと決まっているのに、それが今までわからないのは、本当に『選択集』を読んだ方がおられなかったからでしょう。」(566-567頁)
『速欲離生死」。やはりこの五文字が最も気になる。「サトレルと決まっている」とも空外先生は話されている。「生死」では二元論に陥る。「生死一如」,「生即死」で納まりがつく。ましてや「速やかに」とも言われている。
 要は、『般若心経』中の文言でいえば、「行」を「行ずる」ことである。
 が、これ以上書くのは控える。人のこころの最も “やわらかな” 部分に立ち入るのは、私の信条に反する。
 他にも興味深い話題はたくさんある。これらについては、後日あらためて、ということにさせていただきます。

いまから、現在 育休教諭の Nさんご推薦の、
◆ 瀬尾まいこ『そして、バトンは渡された』文春文庫
を読むことにします。現代小説を読むのは、
以来のことです。二年ちかくが経っています。文学に飢えています。