TWEET「早春の湿原をゆく_ドラミング」

 16時半に葦毛(いもう)湿原の駐車場に到着した。
 長尾池のほとりに立つ、白木蓮の花が、いまにもほどけそうだった。

「2022/03/16_白木蓮」

「THERMOS 真空断熱ケータイマグ 0.35L」に珈琲を入れ、デイパックにしのばせていった。
 昨日と同じ道順をたどった。目を凝らし湿原を一巡し、その後 脇道に分入った。行きづまりでは、昨日は見られなかった幾株かのショウジョウバカマが花をつけていた。
 その後、急登から登山道の分岐まで登った。半ほどまで登ったところで、岩に腰をおろし休憩した。辺りは鎮まっていた。突然 静寂が訪れた。うかつだった。はじめて知った。私の不用意な動きが四囲に伝わり、ざわめき立ちそうで、息をひそめ、鳴りをひそめていた。時間の感覚がなかった。いつまでもこうしていたかった。
 ゆっくりした歩調にかわった。静かに歩を進めた。
 湿原を出てすぐの、広場のベンチに座り、余韻にひたっていた。コゲラだろうか、時折 ドラミングの音が聞こえた。
 駐車場までの林間につけられた道は、早夕闇だった。ヘッドライトを点けて歩いた。
 東の空にかかった月が明るかった。三日後には満ちる。
 書店の文房具売り場で、「丈夫なアルミ製 抜き差ししやすい! スリット加工 鉛筆(えんぴつ)キャップ 4本入り」を二つ買って帰宅した。帰宅後、珈琲の存在を思い出した。
 時間の感覚があやふやで、いまもうつろのなかにある。