小林秀雄「直覚と分析」
「小林秀雄はかくも親切で、熱く、面白く、分かりやすかった!」
両方使えばいい。直覚も分析も使えばいいのです。ベルグソンの分析というのはきわめて鋭いですよ。あなたがお読みになっても、そう思うでしょ?直覚したところを分析するんです。けれど、分析したところは直覚にはならない、とベルグソンは言っているだけです。逆は真ではないと言っているだけです。分析から直覚に行く道はない。でも、直覚から分析に行く道はあるんです。科学者も実はそれをやっているのです。
科学者の実際の仕事を見れば、僕らの知っている科学などというものは、これはもう子どもです。彼らの仕事そのものの中に入ってみますと、やはり立派な科学者は非常な直覚力を持っています。
(中略)
そんなふうに直覚から分析に行く道はあるけれども、分析からは先がないとベルグソンは言っているだけで、分析を決して軽蔑しているわけではない。分析がなければ、科学なんてありません。哲学もありません。というのは、概念というものに頼らずには、人間は論理的に話すことができないんです。ただ、直覚というものがなければ分析は始まらないとベルグソンは言っただけなんです。(80-81頁)