「予断をゆるさぬ俳句のお話」


今 仮に、日本語の音を「五十音」とすれば、十七音からなる世界で最も短い定型詩である俳句は、「五十音」の組み合わせで、その数は 50の17乗になります。

50の17乗の羅列は、PCの得意とする分野であって、容易なことです。これで、現在・過去・未来のすべての俳句が網羅されることになります。なんとも味気ないお話です。

「この土手をのぼるべからず警視庁」
感情の表出のない 五・七・五 は俳句とはいえないと、雲英(きら)末雄先生は何度か口にされました。大学の二年次には、雲英先生に、陰影本をテキストにして、西鶴の『好色五人女』を教えていただきました。また、三年次には「蕉風連句」についての講義を受講しました。雲英先生は、暉峻康隆先生の直系です。


当然 感情の表出のない 50の17乗の羅列は、俳句とよぶことはできませんが、安心できないのが今の時代です。将棋にしてしかり、囲碁にしてしかりです。予断を許さないのが今の時代ということなのでしょうか。

雲英先生のお嬢さんの名づけ親は暉峻先生です。「きらくにこ」、「気楽にいこう」。近世文学がご専門の先生方は、どことなく可笑しく、遊び心があります。同郷ということもあってか、卒業論文の件ではよくしていただきました。崖っぷちに立たされたときには、助け船を出していただきました。学部長をされていたときのことでした。


雲英末雄先生が 2008/10/06 にご逝去されたことを今日はじめて知りました。
訃報に接しご冥福をお祈りいたします。

大切な方たちが一人また一人と亡くなられていきます。
大切な方たちとのお別れが続きます。