本田靖春『評伝 今西錦司』山と溪谷社 _その一

 2021/05/14 の夜、霊長類学者の河合雅雄さんの訃報に接し、その後 長い間 積読したままになっていた、
◇ 本田靖春『評伝 今西錦司』山と溪谷社
発行日 1992年12月1日 初版第一刷」
の奥書がある、古参の単行本を読みはじめ、昨日(2021/05/19)の明け方、読み終えた。
 積読したままの書籍が息を吹き返す、生きることは、私にとって非常にうれしいことである。では徒らに、積読したままになっている書籍を読めばいいのかといえば、それは見当はずれである。
 70頁ほど読み終えたところで、本書は「評伝」であり、出版社は「山と溪谷社」であることに思いをいたした。本田靖春は元読売新聞社の記者であり、本書には多くのインタビュー記事(今西錦司評等々)の記載があり、また出版社が「山と溪谷社」だけに、今西の手法であった「学術探検」の「探検」に重きがおかれていることを再認識した。
◇ 本田靖春『評伝 今西錦司』山と溪谷社
は、
◇『山と溪谷』1989年10月号から1911年12月号
に連載された特集が、単行本として発行されたものである。ただし、本田の病のために、2度におよぶ、計13か月の「休戦」をやむなくされた。
 今西錦司の「学術的業績」、膝下からの「数多くの優秀な学者の輩出」、その「リーダーシップ」は認めるが、人となりは好きになれず、どんなものかと昨日から彷徨っていた。
 武士には馴染みがあるが、町人気質(かたぎ)については本書を通してはじめて触れた。今西錦司は、「『錦屋(にしきや)』という西陣でも有数の織元」の家に生まれた、典型的な町人の血筋をひく者である。
 簡潔にいえば、「武士道」は成立するが、「町人」には道らしきものはなく、よって好みではない、ということである。
 今西を非難、批判する声ばかりが目立つ、しかし尊敬に値するからついていく。短所を補ってまだ余りある、ここに今西錦司の摩訶不思議さがある。
 人格と業績は別個であることは、よくわきまえていますが、今回はこれくらいにさせていただきます。
 今しばらく彷徨することにいたします。
 なお、河合雅雄は、「第9章 霊長類研究グループ」(285頁)から登場します。河合は、「類人猿の中でもとくに(チンパンジーやオランウータンよりも)ゴリラが人に近い」(302頁)と今西に進言している。これがゴリラ探索の端緒となった。