TWEET「一枚のフィルム」

 水面とは、水中と空中を分かつ一枚のフィルムです。釣りとは、一枚のフィルムをはさんでの、釣り人と魚との攻防です。

田上八朗『皮膚の医学―肌荒れからアトピー性皮膚炎まで』中公新書
「皮膚のいちばん表面にある、20ミクロン(1ミクロンは1000分の1ミリ)の薄さしかない角層とよばれる膜」(2頁)は、体内と体外を分かつ一枚のフィルムです。生体とは、一枚のフィルムをはさんでの攻防によって成立する活動主体です。
「このような薄い角層のシートで、水をいっぱいにいれた瓶の口を塞いでみると、何日たっても、水はちっとも減りません。つまり角層は、ゴム袋と同じように、水のような小さな分子でも通しにくい、生体がつくりあげたバリア膜、防御膜です。角層の上に細菌はもちろん、ウィルスのような小さな微生物をべったりと塗りつけたとしても、なかには入ってゆけません。このように、害をおよぼすものは通しにくい性質の膜でからだ全体を包んで保護し、さらにその内側を、繊維や細胞組織が裏打ちをしているのが基本的な皮膚の姿である、といってよいでしょう。」(4頁)