「転ばぬ先の杖はつかない」

 子どもたちと接する際には、「転ばぬ先の杖はつかない」ように心がけているが、時間がないことに託(かこ)つけて、「転ばぬ先の先に杖をつく」失態を繰り返している。「待つ」ことの大切さくらいの心得はあるものの、「猶予もなく」というのが実状である。
 「私のカウンセリングの考え方の基本は『無為』ということです。『何もしない』ということですね。それも『何もしないことに全力を傾注する』」
とは、河合隼雄の発言である。
 カウンセリングの場面と私の立ち位置とは、自ずから意を異にするが、かといって全く別の世界のできごとでもない。折り合いのつけどころを忖度し、機に応じて子どもたちと向き合うこと、いまの私にいえることはこれしきのことでしかない。

以下、
河合隼雄「何もしないことに全力を傾注する」
です。