「百閒先生の寝姿_はじめに」

 理由(わけ)もなく、ただ百閒先生の「寝姿」が気になり、手持ちの文庫に当たりました。そして、「居睡」(内田百閒『百鬼園随筆』福武書店)と「又寝」(内田百閒『蜻蛉玉 内田百閒集成15』ちくま文庫)の二つの作品を読みました。
 さすがに百閒先生の「寝姿」は、美しく愉快でした。

「玄関の入口の面会謝絶の札のわきに、蜀山人の歌が貼ってある。
   世の中に人の来るこそうるさけれ
    とは云ふもののお前ではなし」(「又寝」220頁)
 調べると、
「世の中に人の来るこそうるさけれ
    とは云ふもののお前ではなし」(蜀山人)
「世の中に人の来るこそうれしけれ
    とは云ふもののお前ではなし」(亭主)
「面会謝絶」(亭主)
「春夏秋冬 日没閉門」(亭主)
と、内田家の玄関先は常ににぎやかだったようです。
 百閒先生に倣いて、私も制札を貼るべきか否か、目下沈思黙考中です。ひとえに快眠のためです。