伊藤若冲 「千載具眼の徒を竢つ」
テレビを見る習慣をもち合わせていません。NHK特集「若冲 天才絵師の謎に迫る」の再放送を観たのは偶然の賜物です。こんな出会いを私は大切にしています。
ただならぬ風貌をしています。最新鋭の技術が若冲の作品の細部に迫り、若冲の絵を解き明かしていきますが、解明するまでにはいたらず、若冲の絵はいまだ「千載」の時を待っているかのようでした。
「千載具眼の徒を竢つ」
(千年の間作品を評価してくれる人を待つ)
この言葉は若冲の心意気の表れであって矜持であるとともに、一つの作品にこめた創意と工夫、また気の遠くなるような時間に対して、若冲が観る者に、覚悟を促している言葉のようにも聞こえます。
ナレーションを担当しているのは素人の女子高生、とばかり思っていましたが、実力も実績もある二十歳の小松菜奈さんがやられていたんですね、とは書いたものの、私はいっこうに存じあげませんが…。いろいろとご批判の声もあるようですが、私は、ぎこちなく危なっかしいナレーションを面白いなと思って聴いていました。