「井筒俊彦_いまなぜ岩波文庫なのか」

 今年に入って、岩波文庫から、井筒俊彦の著作が続けて刊行されていることを、昨日知った。
 私の手元にある何冊かの、『井筒俊彦全集』慶應義塾大学出版会  と重複している著作ばかりで、不思議に思っている。
「いまなぜ岩波文庫なのか」。
 出版社(書店)の見識、出版人としての矜持ということを思った。ときに無欲という欲も無心という心さえ障りのある世界の出来事、といえばほめ過ぎか。

2019/02/15
◇ 井筒俊彦『神秘哲学』岩波文庫(2019/02/15)
東洋思想の概念・枠組を大きく変え,日本,世界の思想界に反響を起した井筒俊彦(1914─93)の初期の代表作である.ソクラテス以前の哲人達から,プラトン,アリストテレス,プロティノスへと続くギリシアの精神史を,人知を超えた絶対的真理「自然神秘主義」の展開として捉える.ギリシアを通して東洋思想の深層に踏み込む.


2019/03/15
◇ 井筒俊彦『意味の深みへ』岩波文庫
「精神的東洋」をありかを求めて,仏教唯識論,空海密教,老荘思想,イスラーム神秘主義,現代思想のデリダ,ソシュールを自在に論じた著作.著者は,意識の深層領域に拡がる意識,言語の発生源となる場を「コトバ」を名づける.「コトバ」を基軸とする思惟が東洋思想の本質であることが,次々に解明される.井筒に応答したデリダの小論文(丸山圭三郎訳)を併載.


2019/5/17(予約受付中)
◇ 井筒俊彦『コスモスとアンチコスモス:東洋哲学のために』岩波文庫(2019/5/17)
東洋思想の諸伝統に共通する根源的思惟の元型を探り, 東洋哲学の可能性を探求する. イスラーム, 禅仏教, 老荘思想, 華厳経を時間論, 存在論, 意識論として読み解く. 末尾に司馬遼太郎との生前最後の対談を併載.


岩波文庫の行方に、注目している。