「日本人ばなれした中学生と、信用のおけない中学生と」


 夏期講習を行っています。一昨日までに八日間、計三十六時間の授業を行いました。「歴史漬け」の授業です。毎年、(一日六時間)×(四~五日間)もあれば、おおよそになります。おおよそになるとは、子どもたちが実際に愛知県公立高校入試の過去問に当たって解けるようになる、という意味です。家庭での学習など望むべくもない「信用のおけない中学生」の面々がお相手ですので、すべてを授業中にその場で覚えていただいています。飽くなき反復練習あるのみです。我慢比べです。我慢比べには少々の自信があります。今年は八日かかりました。中一日休んでは三時間、中二日おいては二時間半という時間割で、こま切れの授業を強いられていますのでなかなか定着しません。父の受診日以外のすべての日は、子どもたちのご都合如何、出来如何の時間割を組んでいます。年を追うごとに授業時数は減る傾向にあります。往時の半分以下です。ちなみに今週の授業時間は二時間半のみです。一気呵成にやらなければ、身につかない教科や分野があります。力づくでねじ伏せるのが適当な場面があります。

 受験生泣かせの歴史が短時日で一通りになることの有り難さを、子どもたちは知ってか知らぬか、たとえば僕が、「歴史は五日もあれば仕上がりますよ。いっしょに五日で仕上げませんか」という触れ込みの広告をいれたとしたら、決して少なくない数の受験生からの問い合わせの電話があるか、もしくは誇大広告だとみなされて見向きもされないか、という話をすると、「誇大広告ってなに」と聞かれました。「誇大」と板書し、その後説明しました。今時の中学生は強敵です。

 昨夜の授業では、地理の資料問題の表中に記されている、「飼料」「がん具」の意味がわからないとの質問がありました。「がん具」の「がん」は「玩」と漢字表記すること、あえて訓読みするならば「もてあそぶ」と読むことを伝えると、今度は「もてあそぶ」の意味がわからないものですからお手上げです。

 日中は「涼」を求めて、ファストフード店を転々としています、といえば、「涼」を「量」の意にとられ、「質より量」かと思ったといわれ、夏バテで食欲不振気味の方々をよそ目に、ひとり大食漢にされてしまう始末です。「涼」と板書しても通じず、中学生の向かうところ敵なし、です。

 漢字は表意文字であることへの意識が希薄なことと相まって、漢字の訓読みがおぼつきませんので、熟語の意味の見当をつけることができません。

 イギリスやフランス、ドイツの場所も首都もわからず、東南アジアやヨーローッパの国々の白地図を開いていても、東南アジアやヨーローッパが世界地図上のどこに位置するのかがわかりませんので、本末が転倒してしまいます。高校受験を目前にひかえて、フランスやドイツの場所がわからなくても、私は平然と構えています。受験当日に間にあえばいい、と腹をくくっています。こんな風景が常態化しています。とはいえ、これらのことをいちいちあげつらって、即、学力低下と結びつける論調は、短絡的にすぎると考えています。しょせん暗記するだけのことです。
 
 中学生の子どもたちに鍛えられつつ、磨かれつつ、いつしか強靭な耐性をもつにいたった、創塾二十一年目の夏です。

当塾の教材は、以下のサイトにUPしてあります。
「塾・ひのくるま」
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