「2007年_スクラップブック」より「ブルーギル編」です。


「琵琶湖のブルーギル繁殖心痛む」 天皇陛下ごあいさつ
200711121202
 天皇、皇后両陛下は11日、大津市で開かれた「全国豊かな海づくり大会びわ湖大会」に出席した。天皇陛下は、外来魚ブルーギルが異常繁殖し、琵琶湖の漁獲量が大きく減ったことに触れ、「ブルーギルは50年近く前、私が米国より持ち帰り、水産庁の研究所に寄贈したものであり、当初、食用魚としての期待が大きく養殖が開始されましたが、今このような結果になったことに心を痛めています」と述べた。
 魚類を研究する天皇陛下が外来魚問題について公の場で発言したのは初めて。
 宮内庁によると、天皇陛下は皇太子時代の1960年にアメリカを訪問した際、シカゴ市長からブルーギルを寄贈され、食用や釣りの対象になればと水産庁の研究所に寄贈した。滋賀県によると、1963~64年、国から琵琶湖の県水産試験場にブルーギルが分与された。なんらかの経緯で60年代末までにブルーギルが一般水域で確認されるようになったという。
 天皇陛下は一般水域に入ったブルーギルが生態系を壊したことについて以前から残念に思っており、側近に「おいしい魚なので釣った人は持ち帰って食べてくれれば」などと話していたという。
 天皇陛下はあいさつの最後に「永(なが)い時を経て琵琶湖に適応して生息している生物は、皆かけがえのない存在です。かつて琵琶湖にいたニッポンバラタナゴが絶滅してしまったようなことが二度と起こらないように、琵琶湖の生物を注意深く見守っていくことが大切と思います」と述べた。
 大会実行委員長の嘉田由紀子滋賀県知事は、天皇陛下の発言について「当時は食糧難でたんぱく質を増やそうという時代で、その後、生物の多様性の重要さが指摘されるようになったのに、科学者として勇気ある発言をしてくださった。お気持ちを真摯(しんし)に受け止め、琵琶湖の再生に向けて働きたい」と話した。


「ブルーギル50年前私が、心痛む」 天皇陛下がお言葉
20071112
 天皇、皇后両陛下は11日、大津市で開かれた「全国豊かな海づくり大会びわ湖大会」に出席した。天皇陛下は、外来魚ブルーギルが異常繁殖し、琵琶湖の漁獲量が大きく減ったことに触れ、「ブルーギルは50年近く前、私が米国より持ち帰り、水産庁の研究所に寄贈したものであり、当初、食用魚としての期待が大きく養殖が開始されましたが、今このような結果になったことに心を痛めています」と述べた。

「写真第27回全国豊かな海づくり大会の式典でお言葉を述べる天皇陛下=11日、大津市打出浜のびわ湖ホールで
写真ブルーギル=滋賀県水産課提供」

 魚類を研究する天皇陛下が外来魚問題について公の場で発言したのは初めて。
 宮内庁によると、天皇陛下は皇太子時代の1960年にアメリカを訪問した際、シカゴ市長からブルーギルを寄贈され、食用や釣りの対象になればと水産庁の研究所に寄贈した。滋賀県によると、1963~64年、国から琵琶湖の県水産試験場にブルーギルが分与された。なんらかの経緯で60年代末までにブルーギルが一般水域で確認されるようになったという。
 天皇陛下は一般水域に入ったブルーギルが生態系を壊したことについて以前から残念に思っており、側近に「おいしい魚なので釣った人は持ち帰って食べてくれれば」などと話していたという。
 天皇陛下はあいさつの最後に「永(なが)い時を経て琵琶湖に適応して生息している生物は、皆かけがえのない存在です。かつて琵琶湖にいたニッポンバラタナゴが絶滅してしまったようなことが二度と起こらないように、琵琶湖の生物を注意深く見守っていくことが大切と思います」と述べた。
 大会実行委員長の嘉田由紀子滋賀県知事は、天皇陛下の発言について「当時は食糧難でたんぱく質を増やそうという時代で、その後、生物の多様性の重要さが指摘されるようになったのに、科学者として勇気ある発言をしてくださった。お気持ちを真摯(しんし)に受け止め、琵琶湖の再生に向けて働きたい」と話した。


「天声人語」
20071113日(火曜日)
 山形県鶴岡市のため池で10月末、外来魚のブラックバスが駆除された。池の水を抜き、底を網でさらった50人は「恐ろしく単純な生態系」に驚いた。6年前の水抜きではコイやフナもいたのに、今回は駆除した1400匹以外の生き物が、ほとんど見つからなかった▼外来の生物は、時に在来種を押しのけて日本の自然に定着する。淡水魚では北米原産のブラックバスとブルーギルが有名だ。全国の湖や池で、生態系を回復するための駆除が続いている▼ブルーギルは1960年、皇太子時代の天皇陛下が訪米時に贈られ、持ち帰った。養殖の研究をしているうちに各地に広まったらしい。雑食で生命力が強く、在来種の脅威となっている▼この日曜、琵琶湖のほとりで「全国豊かな海づくり大会」が開かれた。陛下は「お言葉」で、琵琶湖の漁獲減の背景として水質汚染やご自身の米国土産に触れ、「このような結果になったことに心を痛めています」と述べた。ずっと気にされていたのだろう▼この夏、滋賀県庁の食堂にブラックバス料理が登場した。秋に金沢市であった催しでは、ブルーギルのバーガーが試食された。もともと食用目的で渡来した異国の魚たちが、敵役を脱する日が来るかもしれない ▼人類の営みが自然界に及ぼす影響は、この惑星の将来にかかわる。まず、外来種に食べられる小魚の命を気にかけることから始めよう。湖の豊かな生態系を保つことは、地球を長生きさせることにつながる。最強の生物ゆえ、弱いものの境遇には敏感でありたい。