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小林秀雄「直覚と分析」

小林秀雄『学生との対話』国民文化研究会・新潮社編 「小林秀雄はかくも親切で、熱く、面白く、分かりやすかった!」  両方使えばいい。直覚も分析も使えばいいのです。ベルグソンの分析というのはきわめて鋭いですよ。あなたがお読みになっても、そう思うでしょ?直覚したところを分析するんです。けれど、分析したところは直覚にはならない、とベルグソンは言っているだけです。逆は真ではないと言っているだけです。分析から直覚に行く道はない。でも、直覚から分析に行く道はあるんです。科学者も実はそれをやっているのです。  科学者の実際の仕事を見れば、僕らの知っている科学などというものは、これはもう子どもです。彼らの仕事そのものの中に入ってみますと、やはり立派な科学者は非常な直覚力を持っています。 (中略)  そんなふうに直覚から分析に行く道はあるけれども、分析からは先がないとベルグソンは言っているだけで、分析を決して軽蔑しているわけではない。分析がなければ、科学なんてありません。哲学もありません。というのは、概念というものに頼らずには、人間は論理的に話すことができないんです。ただ、直覚というものがなければ分析は始まらないとベルグソンは言っただけなんです。 (80-81頁) ぜひ、前項の「岡潔「ある刹那、とっさに一切が」と比較対照してみてください。

岡潔「ある刹那、とっさに一切が」

山本健吉 岡潔「連句芸術」  岡潔『岡潔対談集_司馬遼太郎,井上靖,時実利彦,山本健吉』朝日文庫 山本  先生にとっては、数学と道元・芭蕉というのは一つのものなんですね。 岡  数学の方が浅いです。こんなものは二代やろうとは思いません(笑)。西洋のもののうちではいちばん深いのでしょうけれども。西洋は、すべて時間・空間というわくのなかに入っているのを知らない。(184頁) (それに対し、東洋は時空を超えることを体験的に知っている) 「身心脱落」  岡潔『一葉舟』角川ソフィア文庫  「私は(道元)「正法眼蔵」の上巻を、なんだかよい本と思って買ってきて座右に置いた。なんだかすばらしい景色のように思えるのだが、春霞(はるがす)みの中の景色である。そんな日々が長く続いた。十三年目に私にある刹那があった。その後この本のどこを読んでもすらすらわかる。それから、十七、八年になるが今でもそうである。しかしこの本は実は絵のようなものであるから、言葉で説明しないほうがよい。  身心脱落とは真如の月が雲を排して出るようなものである」(194-195頁) 「絵画」  岡潔『春風夏雨』角川ソフィア文庫  「ところが近ごろまでその(良寛の書を見る)機会を得なかったのだが、近ごろその写真版四冊を見ることができた。  第一冊を見ると、表紙に「天上大風」と大きな字で書いて署名している。字の配置は正方形の四隅に一字ずつ書いているのである。  私はそれを見ると、直ぐわかった。とっさで、何がどうわかったのかわからないが、一切がわかってしまったのであろう。良寛の書がいわば真正な書であることを、少しも疑わないようになったから。  じっと見ていると、何だかこせこせした心の中のもやもやが吹き払われて、心が段々清々しくなり段々ひろびろして行くような気がする。翌朝もう一度その四字を見ると、字の姿から見て、横に右から左に強い風が吹いているのである。  このはじめのわかり方を「信解(しんげ)」というのである。たとえば『正法眼蔵』に「智ある者若し聞かば即(すなわ)ちよく信解せん」という句が引いてある。  これにならって、第二のわかり方を「情解(じょうげ)」、第三のわかり方を「知解(ちげ)」といえばよいと思う。  人が芸術品について語るさい、まず知解を詳細にのべ、少し情解に及んで終る、のが普通であるが、実際はその逆の順に起るの

「伊勢・松阪の旅」

心急き、以下、「旅の覚書き」です。 2022/10/21 出発 ◇「恋路が浜」 ◇ 伊勢湾フェリー ◆「二見興玉神社」 ◆「小津安二郎 松阪記念館」 ◆「瀧原宮」 ◆「道の駅 木つつ木館」 車中泊 2022/10/22 ◆「瀧原宮」 ◆ 「伊勢神宮 外宮」 ◆「伊勢神宮 内宮」 「おかげ横丁」 「おはらい横丁」 ◇ 伊勢湾フェリー ◇「恋路が浜」 帰宅

TWEET「秋の積読週間」事始め

 路上の枯れ葉が風に舞い、カラカラと音を立てている。窓を開け放てば、金木犀のにおいに包まれ、部屋中に香りが立ち込める。いつしかそんな季節になった。  我が「秋の読書週間」は、あえなく一日で潰(つい)えた。気の流れが内に向かうのを常とする、私の気が外に向かって霧消している。今日もどこかで私を呼ぶ声がする。そして、私は外縁に追いやられ、腐っている。  そんななか、「秋の積読週間」をはじめた。 ◇ 岡潔『風蘭』角川ソフィア文庫 ◇ 岡潔『春風夏雨』角川ソフィア文庫 ◇ 岡潔『一葉舟』角川ソフィア文庫 ◇ 岡潔『夜雨の声』角川ソフィア文庫 ◇ 岡潔『紫の火花』朝日文庫 ◇ 岡潔『岡潔対談集_司馬遼太郎,井上靖,時実利彦,山本健吉』朝日文庫  また、2022/09/29 に亡くなられた大村百合子さんをしのんで、 ◇ なかがわりえこ,おおむらゆりこ『ぐりとぐら』福音館書店  そして、今日発売の ◇ 空木哲生『山を渡る 三多摩大岳部録 5』ハルタコミックス  岡潔の広範な読書歴には、目をみはらされる。自分探しの旅路は美との出会いでもあった。この用意あっての数学者 岡潔であることを忘れてはならないと思っている。

「長浜行」

心急き、以下「旅の覚書き」です。 2022/10/11 出発 ◆「養老 SA(下り)」 車中泊 2022/10/12 ◆「Hotel & Resorts NAGAHAMA(喫茶室)」 ◆「渡岸寺(どうがんじ)」 ◆「十割蕎麦 坊主bar 一休」  湖北で栽培された、籾(もみ)のままを挽き、打った蕎麦は、ほんのり甘かった。手作りのログハウスでの営業と、こちらも手抜かりはなかった。 ◆「国友鉄砲ミュージアム」 ◆「伊吹 PA(上り)」 ◆「養老 SA(上り)」  仮眠 帰宅

TWEET「秋の読書週間」事始め

◇ 白洲正子『西行』新潮文庫 を読み、 ◇ 白洲正子『明恵上人』講談社文芸文庫 を読み、そして、 TWEET「井筒俊彦『事事無礙・理理無礙 ー 存在解体のあと』」 2022/07/24 昨日、 ◇ 河合隼雄『明恵 夢を生きる』京都松柏社 を読み終えた。 「華厳の世界」(284-290頁)の項に引かれた井筒俊彦の文章は明晰で、際立っている。 次回の読書は、 ◇ 井筒俊彦『井筒俊彦全集 第九巻 コスモスとアンチコスモス』慶應義塾大学出版会 ◆「事事無礙・理理無礙 ー 存在解体のあと」 である。明恵上人が信仰してやまなかった、華厳(哲学)についての考察である。ようやく一巡した感を抱いている。  その後、父の介護とその心労で活字を眼で追う気になれなかった。  10月を迎えた。  昨日は、 ◇ 土門拳『古寺を訪ねて 東へ西へ』小学館文庫 ◆「向源寺(渡岸寺)」 ◆「三仏寺」 を読んだ。 これを「秋の読書週間」事始めとする。実りの秋、収穫の秋に期している。