「法隆寺 夢殿秘仏・救世観音菩薩立像_特別開扉」
「岡倉天心」
河上徹太郎『日本のアウトサイダー』中公文庫
「最後に天心の言葉で私の出会った最も美しい一節を紹介する。これは一九〇五年アメリカでの講演原稿の中にあり、美というものが如何に触れれば消えるように繊細なものであるか、又それを敢て手にしようとする人間の罪業のかなしさを述べたもので、この繊細さがあるが故に、彼の豪放な性格がそのまま打ち出せたのである」「マーテルリンクはもし花に羽翼があつたなら、人が近寄れば飛び去るであらうと言つた。私はもし花が花を培養するものゝ残虐から逃れようとしたとて之を咎めぬつもりである。思想の花たる美術は羽翼を持たぬ。根は人生に根ざしてゐる。美術が一時の賞玩の為に如何に摘まれ苅られ、小器の中に無理に押し込まれたかを思ふとき、私は苦しい。宋の詩人、蘇東坡は「人は花を着くる事を恥ぢず。されど花の身には如何。」と言った。若し仏家の前世因果の説が真ならば、花は如何なる罪業を犯して来たのであらう。願くば画家の為に次の世の生れ変りのよからん事を祈る。(『日本的見地より見たる現代美術』)
一読してやはり天心は夢殿観音を発いたことに一抹のうしろめたさを感じているに違いない。とにかくこの言葉は、天心がわが儘だった一生のすべてを顧み、詫び且つ誇った辞世のようである」(170頁)
「夢殿秘仏・救世観音菩薩立像_特別開扉」
開催期間 春 2026年4月11日〜 2026年5月18日 秋 2026年10月22日 ~ 2026年11月22日開催場所 法隆寺 東院伽藍 夢殿
春は虚しく過ぎ去り、喧騒の夏をやり過ごし、静謐の秋を楽しみにしている。
「夢殿秘仏」
和辻哲郎『古寺巡礼』岩波文庫
「しかし夢殿観音の生まれたのは、素朴な霊的要求が深く自然児の胸に萌しはじめたという雰囲気からであった。そのなかでは人はまだ霊と肉との苦しい争いを知らなかった。彼らを導く仏教も、その生まれ出て来た深い内生の分裂からは遠ざかって、むしろ霊肉の調和のうちに、 ー 芸術的な法悦や理想化せられた慈愛のうちに、 ー その最高の契機を認めるものであった。だからそこに結晶したこの観音にも暗い背景は感ぜられない。まして人間の心情を底から掘り返したような深い鋭い精神の陰影もない。ただ素朴で、しかも言い難く神秘的なのである」(294頁)その際には、
中宮寺・本堂「菩薩半跏像(伝如意輪観音)」
薬師寺・東院堂「聖観世音菩薩立像」
東大寺・法華堂(三月堂)「不空羂索観音立像」
室生寺・本堂「如意輪観音菩薩像」
だけは、参拝したいと思っている。