「徒者(いたづらもの)に成り還りて」
白洲正子『現代日本のエッセイ 明恵上人』講談社文芸文庫
「仏法に能く達したりと覚しき人は、いよいよ(くの字点)仏法うとくのみなるなり」(「遺訓」124頁)
「我れ常に志ある人に対していふ。仏になりても何かせん。道を成じても何かせん。一切求め心を捨てはてて、徒者(いたづらもの)に成り還りて、ともかくも私にあてがふことなくして、飢え来たれば食し、寒来れば被(かぶ)るばかりにて、一生はて給はば、大地を打ちはづすとも、道を打ちはづすことは有るまじき」(125頁)
喉もと過ぎれば、それらは方便にすぎなかった。真理とは身辺にあった。明恵上人にとって、それは生活信条だった。